私好みの新刊 20214

『光の正体』 

(たくさんのふしぎ10月号) 江馬一弘/文 松井しのぶ/絵 福音館書店

 「光」を通して電磁波の世界をやさしく説いているが・・。

 最初に夜空の世界が飛び込んでくる。ここで、「星が見えるということは、

わたしたちの目に星からの光が届いているということです。」とまずは「見

あること」の意味を解いている。続いて夜空にはばたく星の場面。これらの

星から光はいったいどれぐらいの時間をかけて、今この地球に届いているの

だろうか。北極星で430年とある。太陽でも8年かかるという。いわゆる

地球7周り半の速さだ。宇宙空間では光は突き進む。

 さてここから難しい問題に直面する。光は「もの」なのか「もの」でない

のか。とりあえず光は「電気の波」と説く。網膜はその「電気の波」を「光」

と認識すると言う。イメージできるだろうか。人の目にもの(小人)が飛び込

んでくる挿絵があるがものではない。次に波長の違いによって色が違って見

える挿絵がある。色の線があるように描かれているが実際には光は無色。水

滴などの反射で光は虹色にわかれる。光には紫外線、赤外線もある。鳥はこ

の紫外線で自然界を見ている。蜜のありかを探るのに都合が良い色か。まっ

暗な空間にも電波や赤外線が飛び交っている。夜中でも携帯電話は鳴り、リ

モコンの波は飛び交っている絵がある。ちょっととばして最後に難問。電波

は波とするとだんだんと弱くなっていくはず。夜空の星も私たちには見えな

くなるはず。ではなぜ星は見えるのか。光は小さな「波」の他に「つぶ」の

性質も持つからとある。粒は無限に飛び続ける。星の光の波がわたしたちの

目に飛び込んでくるというが、「粒」のためか。光は不思議としかいいよう

がない。                   202010月 700

 

『かぐや姫はどうやって月に帰ったの?』 寺田健太郎/作 大阪大学出版会 

 「かぐや姫が月に帰っていく」と言う話は、今まで逸話の世界だった。

それがなんと最近の研究により現実的な話になってきた。はたして、かぐや

(微粒子)は月に向かって地球から流れ出ているという。満月に多く吹く地

球の風の話である。

 けんたろう博士と小学4年生の子どもとの会話で話が進む。はじめに地球

と月との距離や地球を回る月の絵が出る。満月の時は「太陽―地球−月」が

一直線に並ぶ。続いて、太陽風の話と地球磁気の話が出る。ここから話は佳

境に入る。太陽風によって地球の空気のしっぽ(プラズマシート)が出来、そ

れが満月の時に月に届いているという。最近の研究でわかってきた。なんと

も不思議な現象である。確かに満月の夜、地球から空気のしっぽは月に届い

ている。月の周りには、人工衛星「かぐや」が月周辺にたどりついた。

「かぐや」に載せていた観測装置によって月の酸素が満月の時だけ多くなっ

ていることを発見した。 

 続いて地球をとりまく空気の話がある。空気というけれど、主に窒素と酸

素の分子である。その分子たちは超高層大気領域(電離圏)になるとはばらば

らにされて酸素イオンが多くなるという。その酸素イオンが太陽風にのって

地球から飛び出しているという。ちょうど満月の時には、その地球からの酸

素イオンが月面にまともにあたっているという話になっている。ここで、こ

のような研究はとどのように進められるかその経過が書かれている。やはり、

疑問を持ち仮説を立てて、考えを発表することが大切なことが書かれている。

番外編には、月も地球に隕石などを飛ばしているとのこと、月と地球は長年

物々交換をしてきたという話で終わっている。

酸素、窒素というような空気の粒やプラズマ、イオンの話など子どもには

聞きなれない言葉も多いが豊富な挿絵が補っている。イメージはつかめる

だろう。宇宙空間のプラズマの話、子どもたちも興味をいだくだろうか。

20209月刊  1,700円 

            新刊紹介4